ストーカー加害者にGPS装着は必要?まだ強制ではない制度案を考える

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ストーカー加害者にGPS端末を装着させ、被害者に近づいた場合に通知する仕組みが議論されています。

ただし、現時点ではまだ制度として決まったわけではありません。報道されている内容は、自民党の調査会がまとめた「提言案」の段階です。つまり、今すぐ警察がストーカー加害者にGPSを強制装着できるわけではありません。

今後、ストーカー規制法の改正などが検討され、国会で法案が審議され、成立して初めて制度として動き出すことになります。

まだ「強制装着」が始まったわけではない

今回の案で想定されているのは、ストーカー規制法に基づく「禁止命令」が出た加害者にGPS端末を装着させる仕組みです。

禁止命令とは、つきまといや待ち伏せ、押しかけなどをやめるよう命じる制度です。すでに危険性があると判断された相手に対して、さらに被害者へ近づいた場合に通知できるようにする。これが今回のGPS案の中心です。

ただし、GPS装着は人の位置情報を継続的に把握する制度です。加害者であっても、プライバシーや移動の自由に関わります。そのため、「必要だからすぐやるべき」というだけではなく、どのような条件で、誰が判断し、どこまで監視するのかを慎重に決める必要があります。

警察庁も近年、ストーカー規制法の改正内容として、位置情報の無承諾取得や、被害者の勤務先・学校などへの支援に関する見直しを示しており、ストーカー対策は段階的に強化されています。

警察庁 : ストーカー規制法が改正されました!

被害者だけが逃げ続けるのはおかしい

ストーカー被害で深刻なのは、被害者側の生活が大きく壊されることです。

加害者がどこに現れるかわからない。
家の近くに来るかもしれない。
職場に来るかもしれない。
通学路や駅で待ち伏せされるかもしれない。

そうした恐怖があると、被害者は引っ越し、転職、退学、外出制限などを迫られることがあります。

本来、悪いのはつきまといや脅迫をする側です。それなのに、被害者だけが生活を変え、収入を失い、人間関係を失い、安全のためにお金を使わなければならない。これはかなり大きな不公平です。

だからこそ、GPS装着の議論には一定の意味があります。

被害者に「逃げてください」と言うだけでは限界があります。加害者が接近した時点で通知される仕組みがあれば、被害者が早く避難できる可能性があります。警察も状況を把握しやすくなります。

加害者の人権を無視していい、という話ではない

ただし、ここで大事なのは、加害者の人権を完全に無視してよいという話ではないことです。

GPS装着は強い制限です。対象を広げすぎれば、濫用の危険があります。たとえば、単なるトラブルや一方的な訴えだけでGPS装着できるようにしてしまえば、別の問題が起きます。

だから、制度化するなら歯止めが必要です。

たとえば、

・禁止命令が出ている
・再接近のおそれが高い
・過去に命令違反がある
・脅迫や暴力の危険がある
・裁判所が必要と判断する

このような条件を設けるべきです。

特に重要なのは、警察だけの判断ではなく、裁判所の判断を入れることです。

警察が必要性を申し立て、裁判所が危険性や必要性を確認する。そうすれば、被害者保護と加害者側の権利保障のバランスを取りやすくなります。

韓国やイギリスでもGPS監視は使われている

海外では、すでにGPSを使った加害者監視の仕組みがあります。

韓国では、性犯罪などの再犯防止のためにGPS付きの電子足輪が使われています。ストーカー対策としても電子監視制度が議論・導入されており、裁判所の判断が重要な要素になっています。毎日新聞も、韓国では有罪判決前の暫定措置の場合、裁判所が慎重に判断していると報じています。

ストーカーに「GPS装着」効果のほどは? 韓国の現場を訪ねた

また、イギリスでもGPSタグによる位置監視が導入されています。英国政府は、GPSタグを全国展開し、DVやストーカー被害者の保護、接近禁止区域の実効性を高める目的があると説明しています。

Justice Secretary unveils GPS tag rollout to better protect victims

つまり、GPS装着は日本だけの突飛な案ではありません。海外でも、被害者保護のための手段として使われています。

ただし、海外でも問題がないわけではありません。装着の遅れ、監視体制の不備、制度運用の負担などは課題になります。GPSを付ければすべて解決するわけではなく、警察・裁判所・監視機関がきちんと動ける体制が必要です。

GPS装着だけでなく、治療やカウンセリングも必要

今回の提言案では、GPS装着だけでなく、加害者向けの治療やカウンセリングの受診義務化も盛り込まれています。

これは重要です。

ストーカー加害者の中には、相手への執着、支配欲、怒り、被害者意識を強く持っている人もいます。接近を禁止するだけでは、根本的な行動が変わらない場合があります。

もちろん、治療やカウンセリングだけで被害者を守れるわけではありません。危険な加害者には接近防止や逮捕、GPS監視などの強い対応も必要です。

しかし、再犯防止を考えるなら、監視と治療の両方が必要です。

導入するなら「裁判所判断」が現実的

ストーカー加害者へのGPS装着には、賛否が出るはずです。

反対意見としては、加害者のプライバシー侵害、監視社会への不安、誤作動や濫用の危険などが考えられます。

一方で、被害者側から見れば、「命を守るために必要ではないか」という声が出るのは当然です。

被害者は、加害者がどこにいるかわからない恐怖の中で生活しています。引っ越しや転職を繰り返し、経済的損失を受けることもあります。守られるべきは、まず被害者の命と生活です。

だからこそ、制度化するなら、

・誰でも対象にしない
・危険性の高いケースに限る
・裁判所の判断を通す
・期間を区切る
・接近通知の仕組みを整える
・違反時の対応を明確にする
・治療やカウンセリングも組み合わせる

このような形が現実的です。

GPS装着は、加害者を罰するためだけの制度ではありません。被害者が安心して生活を続けるための制度です。

まとめ

ストーカー加害者へのGPS装着は、現時点ではまだ強制ではありません。自民党内の提言案の段階であり、今すぐ制度が始まるわけではありません。

ただ、現行法だけでは被害者を守りきれないケースがあるのも事実です。警察が対応していても、被害者の命が奪われる事件は起きています。

被害者だけが逃げ続ける社会はおかしい。
引っ越し、転職、外出制限を被害者だけに求めるのは限界があります。

GPS装着には人権上の問題があります。だからこそ、裁判所の判断を通し、対象を危険性の高いケースに絞るべきです。

加害者のプライバシーを完全に無視してよいわけではありません。
しかし、すでに禁止命令が出ているような危険なケースでは、被害者の命と生活を守るため、GPS装着を選択肢に入れるべきです。

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