年金の繰り上げ受給で後悔する人とは?会社員・公務員の注意点

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年金の繰り上げ受給は、今すぐ生活費が必要な人には助けになります。ただし、会社員・公務員など、厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人は、老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金にも影響します。

年金は原則65歳から受け取りますが、希望すれば60歳から64歳の間に早めて受け取れます。これが年金の繰り上げ受給です。

厚生年金に加入していた期間がある人は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れる場合があります。この場合、繰り上げ受給をするときは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を原則として同時に繰り上げる必要があります。つまり、「老齢基礎年金だけ早くもらって、老齢厚生年金は65歳から受け取る」という選び方は、原則としてできません。

また、一度繰り上げると、あとから「やっぱり65歳からに戻したい」と思っても原則として取り消せません。日本年金機構でも、繰り上げ請求後は取り消しできず、減額された年金を生涯受け取ることになるとされています。

まずは、この記事の要点をまとめます。

疑問結論
60歳からもらうと損?60歳から繰り上げる場合、80歳前後から65歳受給のほうが有利になりやすい
61歳・62歳なら損しにくい?減額率は下がるが、一生減る点は同じ
年金額はどれくらい減る?60歳なら24%減、62歳なら14.4%減
あとから取り消せる?原則として取り消せない
老齢基礎年金だけ繰り上げられる?原則として老齢厚生年金も同時に繰り上げる
働きながらもらえる?可能。ただし老齢厚生年金が支給停止になる場合がある
加給年金や振替加算は関係する?配偶者や子どもがいる人は確認したほうがいい
後悔しにくい人は?減額や支給停止、家族に関係する加算まで確認したうえで選ぶ人

実際の年金額は人によって違います。繰り上げ受給を考える場合は、ねんきんネットで「60歳から受け取る場合」「65歳から受け取る場合」など、受給開始年齢を変えて年金見込額を試算しておくと判断しやすくなります。日本年金機構でも、ねんきんネットでは老齢年金を受け取る年齢などを設定して年金見込額を試算できると説明されています。

「ねんきんネット」による年金見込額試算 – 日本年金機構

この記事では、会社員・公務員など厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人に向けて、年金の繰り上げ受給で後悔しやすいケースを解説します。

60歳・61歳・62歳から年金をもらうと本当に損なのか

結論から言うと、結果的に受け取り期間が短くなった場合は、金額面で有利になることがあります。ただし、長く受け取るほど、65歳から受け取る場合のほうが有利になりやすくなります。

年金を繰り上げると、早く受け取れる代わりに、1か月早めるごとに年金額が減ります。

昭和37年4月2日以後生まれの人は、1か月繰り上げるごとに0.4%減額されます。日本年金機構でも、老齢年金を繰り上げ請求すると、繰り上げる期間に応じて年金額が減額されると説明されています。

受給開始年齢減額率の目安本来年100万円なら
60歳24.0%年76万円
61歳19.2%年80.8万円
62歳14.4%年85.6万円
63歳9.6%年90.4万円
64歳4.8%年95.2万円

60歳から繰り上げると、本来は受け取れない60歳から64歳の間にも年金を受け取れます。ただし、65歳以降も減った年金額のままです。あとから本来の年金額に戻ることはありません。

そのため、「早くもらえるから得」と単純には言えません。

60歳からの繰り上げ受給は80歳前後から不利になりやすい

60歳から繰り上げた場合、80歳前後から不利になりやすいです。

たとえば、本来65歳から年100万円もらえる人が、60歳から繰り上げると年76万円になります。

60歳から64歳までに受け取る年金は、合計380万円です。

一方、65歳から本来どおり受け取る人は、65歳以降に年100万円ずつ受け取ります。

年齢60歳繰り上げの累計65歳受給の累計
65歳380万円0円
70歳760万円500万円
75歳1,140万円1,000万円
80歳1,520万円1,500万円
81歳1,596万円1,600万円

この例では、80歳ごろまでは60歳繰り上げのほうが累計額は多くなります。しかし、81歳ごろから65歳受給のほうが上回ります。

そのため、60歳から繰り上げる場合は、80歳前後から65歳受給のほうが有利になりやすいと考えられます。

ただし、これは60歳0か月から繰り上げた場合の一例です。実際には、61歳、62歳、63歳、64歳だけでなく、62歳6か月や63歳3か月など、何歳何か月から繰り上げるかによって、不利になり始める時期は変わります。

繰り上げ受給を考えるときは、ねんきんネットなどで自分の受給開始年齢を変えて試算しておくと安心です。

年金が一生減るのはどれくらい痛いのか

60歳から繰り上げると、本来月10万円の年金は月7万6,000円になります。差額は毎月2万4,000円です。この差は、1年で28万8,000円、10年で288万円、20年で576万円になります。

毎月2万4,000円と聞くと、何とかなるように感じるかもしれません。

しかし、実際の生活では、年金から税金や社会保険料が引かれる場合もあります。手元に残る金額で考えると、毎月の差はより重く感じやすくなります。

年金は長く受け取るお金です。繰り上げ受給をすると、75歳、80歳になってからも減った金額のまま生活することになります。

今の生活費だけで決めると、将来、毎月の生活費が足りず、「繰り上げなければよかった」と後悔する可能性があります。

繰り上げたあとに取り消せるのか?

年金の繰り上げ受給は、原則として取り消せません。

一度繰り上げ請求をすると、あとから「やっぱり65歳からに戻したい」と思っても戻せません。日本年金機構でも、老齢年金を繰り上げ請求した後は、繰り上げ請求を取り消すことはできないと説明されています。

また、繰り上げ受給で減った年金額は、65歳になっても本来の額に戻りません。

そのため、繰り上げ受給を考えるときは、自分の年金額、生活費、働く予定、家族構成をふまえて、65歳以降も減った年金額で生活できるかを確認しておくことが大切です。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げる必要がある

厚生年金がある人が年金を繰り上げて受け取る場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として同時に繰り上げる必要があります。

たとえば、「老齢基礎年金だけ早くもらって、老齢厚生年金は65歳から受け取る」という選び方は、原則としてできません。

ここで注意したいのは、同時に繰り上げると、両方の年金が減額されることです。

老齢基礎年金だけを早く受け取りたいと思っていても、老齢厚生年金も一緒に繰り上げることになれば、厚生年金部分も減ります。

そのため、あとから「基礎年金だけ繰り上げればよかった」と思っても、原則として戻せません。

会社員・公務員など、厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が減ることを前提に、65歳以降の生活費を確認しておくことが大切です。

働きながら繰り上げ受給するとこうなります

60歳以降も厚生年金に加入して働く場合、給料や賞与の金額によって、老齢厚生年金が一部または全部止まることがあります。

これは「在職老齢年金」という仕組みです。

令和8年度は、給与と賞与を月額に直した金額と、老齢厚生年金の月額を合計して65万円を超えると、超えた金額の半分が老齢厚生年金から支給停止されます。なお、老齢基礎年金は在職老齢年金による調整の対象ではありません。

たとえば、給与や賞与を月額に直した金額が41万円、老齢厚生年金が月15万円なら、合計は56万円です。この場合、65万円以下なので支給停止はありません。

一方、給与や賞与を月額に直した金額が55万円、老齢厚生年金が月15万円なら、合計は70万円です。65万円を5万円超えるため、その半分の2万5,000円が老齢厚生年金から支給停止されます

支給停止の対象になるのは老齢厚生年金です。老齢基礎年金は、在職老齢年金による支給停止の対象ではありません。

つまり、働きながら繰り上げ受給を考えている人は、給料や賞与で生活できるか、老齢厚生年金が支給停止の対象にならないかを確認したうえで、繰り上げるかどうかを考えることが大切です。

遺族厚生年金は65歳前の受け取り方に注意

65歳前に遺族厚生年金を受け取れるようになった場合、自分の老齢年金を繰り上げる前に確認したほうがいいです。

たとえば、63歳で配偶者が亡くなり、遺族厚生年金を受け取れるようになったとします。

この場合、65歳になるまでは、繰り上げた自分の老齢年金と遺族厚生年金を両方そのまま受け取ることはできません。どちらか一方を選ぶ形になります。

そのため、遺族厚生年金を受け取れる人は、自分の老齢年金を急いで繰り上げるより、65歳まで待ったほうが有利になる場合があります。

ただし、どちらがよいかは、自分の老齢年金額、遺族厚生年金額、生活費によって変わります。配偶者の厚生年金が関係しそうな人は、繰り上げ前に年金事務所で確認しておくと安心です。

障害年金に影響することがある

結論から言うと、繰り上げ受給をしたあとに障害の状態になった場合、障害年金を受け取れないことがあります。

障害年金は、病気やけがで生活や仕事に大きな支障が出たときに受け取れる年金です。

ただし、老齢年金を繰り上げたあとに障害の状態になった場合、障害基礎年金や障害厚生年金を請求できない場合があります。日本年金機構の資料でも、繰上げ請求をすると、事後重症などによる障害基礎年金が受けられなくなるとされています。

持病がある人、治療中の病気がある人、体調に不安がある人は、繰り上げ受給を決める前に確認しておいたほうが安心です。

加給年金が関係する人は、繰り上げ前に確認したほうがいい

結論から言うと、65歳未満の配偶者や、18歳になった年度の3月31日までの子どもがいる人は、繰り上げ受給を決める前に加給年金も確認したほうがいいです。

加給年金は、厚生年金に20年以上加入していた人に、一定の配偶者や子どもがいる場合、老齢厚生年金に上乗せされる年金です。

令和8年4月からの加給年金額は、配偶者が年24万3,800円、1人目・2人目の子どももそれぞれ年24万3,800円です。3人目以降の子どもは、1人につき年8万1,300円です。配偶者については、生年月日によって特別加算がつきます。

このように、加給年金は金額が小さいとは言えません。そのため、繰り上げ受給で自分の年金を早くもらうことだけを見ていると、家族に関係する加算を見落として後悔することがあります。

ただし、加給年金はずっと続くわけではありません。配偶者が65歳になった場合や、子どもが18歳到達年度末を過ぎた場合などは、対象から外れます。

また、配偶者が一定の老齢厚生年金や障害年金を受け取れる場合、配偶者分の加給年金が支給停止されることがあります。実際に年金を受け取っていなくても、受け取る権利があるだけで停止される場合があるため注意が必要です。

65歳未満の配偶者や子どもがいる人は、繰り上げ受給を決める前に、自分の年金額だけでなく、加給年金が関係するかも確認しておくと安心です。

振替加算が関係する配偶者も確認が必要

配偶者の年金に振替加算が関係する場合は、繰り上げ受給を決める前に確認しておいたほうがいいです。

振替加算は、配偶者分の加給年金が終わったあと、条件を満たす配偶者本人の老齢基礎年金に上乗せされるお金です。

簡単に言うと、夫または妻についていた加給年金が、一定の条件で配偶者本人の年金に移るような仕組みです。

ただし、振替加算はすべての人につくわけではありません。生年月日や厚生年金の加入期間などによって対象が決まります。日本年金機構では、振替加算の対象者として、生年月日が大正15年4月2日から昭和41年4月1日までであることなどが示されています。

繰り上げ受給は、自分の年金額だけで判断しがちです。しかし、配偶者がいる場合は、加給年金や振替加算まで含めて見る必要があります。

ここを確認しないまま繰り上げると、「自分の年金だけを見て決めてしまった」とあとで後悔することがあります。

65歳未満の配偶者がいる人、厚生年金の加入期間が20年以上ある人、配偶者の年金開始時期が近い人は、日本年金機構の「加給年金額と振替加算」ページや年金事務所で確認しておくと安心です。

どんな人なら繰り上げても後悔しにくいのか

結論から言うと、今すぐ生活費が必要で、年金が減ることや厚生年金特有の注意点も確認したうえで選ぶ人は、後悔しにくいです。

たとえば、次のような人です。

  • 収入がほとんどない
  • 貯金を取り崩して生活している
  • 体調面で働くのが難しい
  • 65歳まで待つと生活が成り立たない
  • 年金が減っても生活できる見通しがある
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金が同時に減ることを理解している
  • 働いた場合の老齢厚生年金への影響を確認している
  • 加給年金や振替加算が関係するか確認している
  • 遺族厚生年金や障害年金への影響を確認している

繰り上げ受給は、必ず悪い選択ではありません。

今の生活を守るために必要なら、現実的な選択肢になります。

ただし、年金額は一生減ります。あとから取り消すこともできません。老齢厚生年金や家族に関係する年金にも影響する場合があります。

そのため、繰り上げ受給で後悔しにくいのは、「減額や注意点を理解したうえで、それでも今の生活に必要だと判断した人」です。

まとめ

年金の繰り上げ受給は、今すぐ生活費が必要な人には助けになります。ただし、会社員・公務員など、厚生年金に加入している人、または過去に加入していた人は、老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金にも影響します。

60歳から受け取る場合は、80歳前後から65歳受給のほうが有利になりやすくなります。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金は原則として同時に繰り上げる必要があり、年金額は一生減ります。

さらに、働きながら受け取る場合は老齢厚生年金が支給停止になることがあります。加給年金、振替加算、遺族厚生年金、障害年金に影響する場合もあります。

後悔を防ぐには、ねんきんネットなどで年金見込額を試算し、生活費、働き方、配偶者や子どもに関係する年金も含めて判断することが大切です。

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